青果の需要変化と物流戦略

本レポートは、CCCMKHDがV会員にサービス提供している家計簿アプリ「レシーカ」ユーザー(約5万人)のレシートデータと、CCCマーケティング総合研究所による全国主要企業へのヒアリング調査に基づき、独自の視点で「食」業態を中心としたレポートをお届けします。
 

青果物流が小売市場を変える
 生鮮三品はスーパーマーケットの売り上げの中心であり、その動きがスーパーマーケットの業績を左右します。ここ数か月の状況を振り返ると、円安による影響も大きく価格高騰から牛肉の利用は減速傾向にあります。精肉では牛肉から鶏肉・豚肉へのシフトが加速し、鶏肉の需要は拡大が続いています。
 一方、コロナ禍以降、取り扱い魚種の拡大が続き、売り上げ堅調に推移してきた鮮魚は燃料費の高騰が価格高につながり、価格が安定推移しているマグロなどに需要が集中しつつあるようです。また、ロシア産などの流入が続いているカニや魚卵類は割安感から売れ行きが好調に推移しており、やや需要状況が変化してきています。
 カット野菜の拡大などにより全体の需要が変化を来たしている青果は天候不順などの影響から価格がなかなか安定していない状況が続いています。全体に価格は高めに推移していますが、ブロッコリーや豆苗などが需要を下支えしています。カット野菜は、以前は千切りキャベツが市場の大半を占めていましたが、直近ではサラダもミックススタイルの需要が拡大し、炒めもの用カット野菜の需要も微増傾向が続いており、完全に市場定着したと言えます。こうした状況の中で青果は取扱状況に変化がみられ、トマト・ブロッコリーが中心アイテムとしての地位を確立し、豆苗などの新野菜が市場拡大を続けています。
 野菜種の変化は産地の変化にも直結していますが、じわじわと産地変化に影響を及ぼしつつあるのが物流の「2024年問題」です。時間外労働の上限規制からドライバーが不足する「2024年問題」ですが、この影響から産地からの配送回数が減るなど対応を迫られるケースが出てきていることが大きく影響しています。一部のスーパーマーケットでは物流費の高騰から産地直送による調達から市場経由の調達に転換するなど、調達戦略を見直す動きも広がりつつあります。鮮魚や精肉では冷凍物流もありますが、チルド物流が主体となる青果は物流の「2024年問題」の影響がより大きくなっています。配送回数の間引きで物流費の高騰に対応を図っている企業でも間引き配送の影響から鮮度の問題が浮上しているケースもあり、その影響はかなり大きくなっています。スーパーマーケットではすでに物流統合の動きも出ていますが、青果の調達・物流は各企業の今後の戦略において重要な位置を占めることは間違いなさそうです 
 青果はドラッグストアやホームセンターなどの取り扱いも増加しており、需給構造そのものが大きく変化してきています。生鮮三品の中でもより身近なアイテムとして位置づけられる青果はスーパーマーケットだけでなく今後のリテイル全体のシェアにも大きく影響するため、その調達・物流戦略は極めて重要です。鮮度を守りながら、いかに効率的な調達を行うか。新たな動きが注目されるところです。


スーパーマーケット 24年問題 物流 青果



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※レシーカとは、CCCMKホールディングス株式会社がV会員に提供する家計簿アプリ。
レシーカユーザー(約5万人)のレシートデータを分析することができる。


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担当:大澤