2023年12月
- 2024.02.28
- 産業動向レポート
本レポートは、CCCMKHDがT会員にサービス提供している家計簿アプリ「レシーカ」ユーザー(約5万人)のレシートデータと、CCCマーケティング総合研究所による全国主要企業へのヒアリング調査に基づき、独自の視点で「食」業態を中心としたレポートをお届けします。
ビール復活が小売・外食を押し上げ
コロナ禍で大きな打撃を受けたパブ・居酒屋業態の利用客数の回復が鮮明になっています。長く低迷傾向にあった宴会需要も23年の秋口以降回復傾向が強まり、忘・新年会の需要も前年と比較すると大幅な伸びを記録した企業が多くなりました。個人の少人数宴会だけでなく、コロナ禍で需要がほぼゼロに落ち込んだ法人宴会も上昇してきた点がパブ・居酒屋企業の増収に貢献しています。
パブ・居酒屋業態の大きな課題となっている二次会需要にも変化が見られています。パブ・居酒屋業態は18~20時の入店が主体で以降の時間帯は時間が遅くなるにつれ需要が落ち込む一次会需要型で推移してきましたが、この年末年始は20~22時の時間帯の需要も伸び、二次会需要に動きが出てきたことが業態全体の復活をさらに鮮明にしました。
コロナ禍前はパブ・居酒屋市場においては「和高洋低」の傾向が強く、刺身居酒屋が全国的に大きな割合を占めていましたが、コロナ禍後の動きを見ると、いわゆる“千ベロ”が安定した集客を見せ、「焼きとん」「ホルモン」といった業態が特に好調な集客となっています。市場全体でみると「パブ・ビアホール」といった洋業態が全国的に活性化しており、特に23年の秋以降、集客が上昇し、市場のトーン転換が進んでいます。また、大打撃を受けた“大箱”居酒屋も利用が少しずつ回復してきている点も注目されます。“大箱”居酒屋の客数回復には、インバウンド客の利用が大きく貢献しており、このトレンドは24年も続くことが予想されます。日本の居酒屋は外客の需要ニーズがもともと高く、コロナ禍前から大きな恩恵を受けていました。外客に「焼き鳥」「刺身」といったアイテムの人気は根強く、和風居酒屋の集客はインバウンドの回復・拡大とともにさらに力強いものになってくることが予想されます。
外食需要の回復の一方で、コロナ禍中に拡大した「家飲み」市場は堅調に推移しています。外食・内食のアルコール需要をみると、アルコール市場全体がより回復してきていることがわかります。その動きを後押ししたのが23年10月の酒税法改正で「ビール」が減税となり、いわゆる「第三のビール」が増税となったことが価格差解消となりビール需要の復活につながりました。この年末年始の小売業態の業績においてもコンビニエンスストアのビール販売、ドラッグストアやホームセンターでのビールのケース販売は好調に推移し、特に集客苦戦が続くホームセンターではビールが集客貢献している店舗も少なくありません。
物流費や人件費の高騰が続く中で、パブ・居酒屋市場、小売市場は更なる値上げとなる可能性が高く、ビールを中心に活性化している動きがこのまま維持されていくかどうかは各市場で業績の大きな分岐となる要素となりそうです。単にビールだけを売るのではなく、ビールと合うメニューの提案や併売促進の働きかけがますます重要になっていきそうです。
※レシーカとは、CCCMKホールディングス株式会社がT会員に提供する家計簿アプリ。
レシーカユーザー(約5万人)のレシートデータを分析することができる。