2023年10月

本レポートは、CCCMKHDがT会員にサービス提供している家計簿アプリ「レシーカ」ユーザー(約5万人)のレシートデータと、CCCマーケティング総合研究所による全国主要企業へのヒアリング調査に基づき、独自の視点で「食」業態を中心としたレポートをお届けします。
 

「復刻」という新トレンド
 外食・中食市場において「復刻」の動きがここ数年続いています。特に外食市場においては“昭和レトロ”の動きが強まり、70年代~80年代にかけて国内市場で拡大したメニューのリバイバルの動きが活発化しています。70年代~80年代は国内における外食の産業化黎明期に当たり、内食から外食への転換が一気に進んだタイミングであり、外食はレジャー、ハレの要素が色濃かった時代です。マクドナルドやすかいらーく、ロイヤルホストなど、現在、外食市場において売上上位を占めている企業の多くは当時の外食ブームで拡大した企業がほとんどです。
 現在、外食市場において「復刻」の動きの中心になっているのが国内固有の業態と言われる「純喫茶」に関連するものです。ここ数年を振り返っても厚焼きホットケーキからナポリタン、フルーツサンド、オムライスなど、枚挙にいとまがありません。今年の夏は「クリームソーダ」がレストラン、カフェで多く採用され、売り上げも好調に推移しました。昨年の冬ぐらいから都心部中心に動き出している「プリン・ア・ラ・モード」も今年の夏はさらにメニュー投下企業が増加し、利用拡大が全国的に進んでいます。
 今ではコンビニエンスストアのパスタメニューの中心商品となっている「ナポリタン」も純喫茶型のメニューの一つと言えますが、「ナポリタン」は外食店で専業業態が拡大しているほか、中食・冷凍食品での利用も上昇しており、令和の新定番メニューとしての地位を確立しています。
 こうした昭和レトロメニューは外食黎明期でハレの外食を楽しんだ層が支持しているのはもちろんですが、「クリームソーダ」や「プリン・ア・ラ・モード」に代表されるように目で見る楽しさという点で若年層にも支持が広がっている点が大きな特徴と言えます。
 コンビニエンスストアでは「ナポリタン」を筆頭に「復刻」の動きを活用してメニュー定着に成功しているものが多くありますが、「焼きそばパン」、「ナポリタンパン」など惣菜パンで“昭和レトロ”の活用が目立っており、次なる復刻の動きが注目されるところです。また、中食では「ハムカツ」「アジフライ」といったメニューが投下され、利用拡大傾向にあり、まだまだ復刻の動きは継続していきそうな勢いを見せています。
 食にまつわる企業にとってメニューは成長の生命線とも言える重要なものですが、多様化が進み、ヒットメニューを開発することは年々難しくなっています。“昭和レトロ”は支持層の広がりが期待できるという点で多様化の進展を乗り超える可能性を秘めているアプローチと言えます。一方で安易な活用は本質的な支持の流れに水を差してしまうリスクがあることは言うまでもありません。自社の歴史を振り返り、埋もれてしまったメニューに再び光を当ててみると意外なヒットにつながる可能性もありそうです。


復刻 クリームソーダ ナポリタン 昭和レトロ ヒットメニュー 外食



                 これまでの産業動向レポートはこちらから!

※レシーカとは、CCCMKホールディングス株式会社がT会員に提供する家計簿アプリ。
レシーカユーザー(約5万人)のレシートデータを分析することができる。


【お問合せ先】
CCCマーケティング総合研究所
担当:奥田