2023年5月

本レポートは、CCCMKHDがT会員にサービス提供している家計簿アプリ「レシーカ」ユーザー(約5万人)のレシートデータと、CCCマーケティング総合研究所による全国主要企業へのヒアリング調査に基づき、独自の視点で「食」業態を中心としたレポートをお届けします。

コロナ禍で市場転換進むベーカリー
 コロナ禍と輸入小麦の売り渡し価格の上昇により、ベーカリーの営業状況はコロナ禍前とは大きく様変わりしています。昨年末以降、流動回復はしているものの様々な原材料の価格上昇に伴い、ベーカリーでは値上げが不可避の状況に陥っており、値上げに伴い利用客数を減らしてしまっているケースもあるようです。
 コロナ禍直後は内食への回帰傾向が強まり、パン需要は堅調に推移しました。内食時間の充実は、ホームベーカリーやホットサンドメーカーの需要拡大にもつながりました。また、パン食機会の拡大は高級食パンの需要拡大にもつながり、国内に多くの高級食パンチェーンを出現させる結果となりました。しかし、徐々に内食から中食・外食への転換が進むようになると、高級食パンチェーンは急拡大した勢いが一変し、店舗数の減少が全国的に広がっています。
 高級食パンは拡大当初から、喫食機会の限界などから伸び悩みの懸念が指摘されていましたが、ベーカリー自体もコロナ禍を経て、店舗数を減らしている地域が少なくありません。コロナ禍前のベーカリーはカフェ需要の拡大を受けて、イートインを併設した店舗が増加する傾向にありましたが、コロナ禍によって利用状況は一変し、個人経営店ではイートインスペースをなくす動きが拡大しました。
また、ベーカリーでは販売形態の転換もコロナ禍によって進んだ点の一つです。従来は利用者が好きなパンをトレイに自分で取って選ぶスタイルが一般的でしたが、衛生懸念から個包装化が進展。さらにはカウンター越しにオーダーを受けた店員が入れるスタイルも増加しました。
 商品面でもコロナ禍前はバラエティ豊かな商品展開が重要視されており、商品数を競う傾向が見られていましたが、コロナ禍による需要転換を受けて、ペストリー特化、あんパン特化、惣菜パン特化というように特定ジャンルの商品に絞り込みを行うベーカリーが増加傾向にあります。高級食パン店のように、ほぼ単一のアイテムで勝負するベーカリーもあり、バラエティ訴求のチェーン店、スペシャリティ訴求の個人経営店というすみ分けが進んできているような気配も見せています。また、この業態転換に合わせ、立地、店舗規模にも変化が見られています。以前は流動客数重視の傾向から複合商業への出店が多くなっていましたが、最近は駅前や商店街の狭小店舗への出店が目立っており、商店街に特化型業態を複数展開するような新興勢力も出現している点は注目されます。
 もはや国内におけるパン食は年齢層を問わず大きな広がりを見せており、価格面でも非常に幅広い受容性を示しています。流動が回復し、世界初のベーカリーショップを日本でオープンしたゴディバやベーカリー業態を展開加速する成城石井など、企業のベーカリー市場における視線は再び熱さを増しています。インバウンド客にも国内のパンは高い人気を示しており、ベーカリー市場は一気に市場活性化が進んでくることが予想されます。






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※レシーカとは、CCCMKホールディングス株式会社がT会員に提供する家計簿アプリ。
レシーカユーザー(約5万人)のレシートデータを分析することができる。


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CCCマーケティング総合研究所
担当:奥田