2023年1月
- 2023.03.14
- 産業動向レポート
本レポートは、CCCMKHDがT会員にサービス提供している家計簿アプリ「レシーカ」ユーザー(約5万人)のレシートデータと、CCCマーケティング総合研究所による全国主要企業へのヒアリング調査に基づき、独自の視点で「食」業態を中心としたレポートをお届けします。
世界へ広がる発酵食品の動き
花粉シーズンが到来するとスーパーマーケットやコンビニエンスストアではヨーグルトの売り上げが伸びます。このヨーグルトに代表される発酵食品は近年、食品市場において存在感を増しているジャンルの一つです。もともと国内には納豆や味噌など、さまざまな発酵食品があり、さらにキムチやアンチョビなどの海外発酵食品を含めると、実に多様な商品が食卓を彩る状況になっています。コロナ禍直後は納豆やヨーグルトが免疫力アップの期待から売り上げが急増しましたが、コロナ禍が落ち着きつつある現在も発酵食品は全体に好調な売れ行きを示しています。直近では「甘酒」のヒットも記憶に新しいと思いますが、「米麹」や「果実酢」など、発酵食品ジャンルからは相次いでスマッシュヒット商品が出ており、活発な動きが続いています。
実はこれらの発酵食品は国内だけでなく海外市場においても注目が集まり、市場規模が拡大しています。19年ごろから欧州や北米で発酵食品の動きは活発化し、コロナ禍以降はより積極的な取得を心がける層が増え、それに伴い、日本産の酢や味噌などの発酵食品が海を渡って販売されるようになっています。
国内においては各ジャンルに大メーカーが存在する一方で地域に根差した中小の老舗メーカーが林立しているのが発酵食品市場の特徴ですが、近年は健康意識の高まりを受けて市場拡大が続くと見込んだ新興企業が独自の発酵技術を使って商品開発し、市場参入してくる動きも活発化しています。ベンチャーの動きが活発化しているのは海外でも同様の傾向で、食品展示会などをみると、発酵食品は代替肉と並んで新興形企業が多いフィールドとなっています。
食品スーパーにおいては発酵食品関連の棚は拡張されていますが、外食・中食の世界にも発酵食品を活用したメニューは増加傾向にあり、外食では“発酵”を活用した業態も再び出店数が増加してきています。17年ごろに一度、発酵関連の外食店が増加しましたが、今回の発酵活用業態は日本の発酵食品をフレンチやイタリアンで活用するといったアプローチであったり、海外の発酵食品を和風アレンジしてみたり、フュージョンスタイルで発酵食品を活用したタイプの業態が増加している点が前回と異なる特徴となっています。
発酵食品は日々喫食することで体質改善が進むと言われるため、リピートが前提となっています。食品スーパーやコンビニエンスストアにおいては日々の売り上げにつながりやすいアイテムであり、外食店にとっては高頻度の利用につながりやすい商品の一つであると言えます。値上げの波が押し寄せる中で利用機会の低下は業績悪化に直結する小売業態において、発酵食品のようにリピート要素を持った商品群をうまく取り入れることは、ますます重要になってきます。発酵市場拡大の動きをいかに活用していくか、各メーカーはもちろん小売業態の動きにも注目されます。
※レシーカとは、CCCMKホールディングス株式会社がT会員に提供する家計簿アプリ。
レシーカユーザー(約5万人)のレシートデータを分析することができる。