2022年10月
- 2022.12.13
- 産業動向レポート
本レポートは、CCCMKHDがT会員にサービス提供している家計簿アプリ「レシーカ」ユーザー(約5万人)のレシートデータと、CCCマーケティング総合研究所による全国主要企業へのヒアリング調査に基づき、独自の視点で「食」業態を中心としたレポートをお届けします。
コメ需要は復活する?
流動拡大が続き、小売・サービス業は全体に業績改善が続いています。また、インバウンドが戻り始め、早くも百貨店や家電量販店、ドラッグストアなどでインバウンド効果が出始めています。長くコロナ禍で苦しんできた飲食店も流動拡大効果でほぼ全業態でコロナ禍前の利用に戻りつつあります。依然としてディナー帯の利用は苦戦が続いていますが、徐々にディナーの外食需要も改善する兆しもみられています。こうした活況トーンに水を差しそうな懸念要素が“値上げラッシュ”の動きです。この10月も値上げした商品が食品・日用品で多くみられましたが、観光支援などにより不定期型の消費が増大したことを受け、日常品の値上げ印象が薄まって感じられる状況が消費減速するような動きを押しとどめているようです。ただ、今回の値上げの動きは長く断続的に続くとみられ、その影響はこれからじわじわ広がることが懸念されます。
あらゆるものが値上げする中で比較的安定した価格を維持しているのが「コメ」です。コメの消費は長く減少傾向にあり、1世帯当たりの年間消費支出額では14年以降、パンを下回る状況が続いています。一方、この間に産地はブランド米開発を続け、現在では各都道府県にオリジナルブランド米が存在する状況となっています。また、米粉を使ったパンやクッキーの開発なども行われ、コメ需要を促進する動きは各所で行われてきましたが、飛躍的な需要増には至っていないというのが現状です。
こうしたコメ離れが長く続く状況の中で、生鮮三品含む食品全般の値上げの動きは米需要回復の転換点になるのではないかと注目されています。コンビニエンスストアでは弁当などではハイ&ローの価格戦略が見られていますが、主力品であるおにぎりでは素材重視ながら高価格品を投下し、需要刺激に成功している商品も見られます。また、丼系メニューの拡充も進み、コメの活用は中食需要拡大の重要ポイントになっています。
一方、苦戦が続いてきた外食店でもテイクアウト需要が見込める業態として親子丼、かつ丼専門店などがコロナ禍以降、出店が増加してきています。コロナ禍で路面店の閉店が相次ぐ中で狭小路面ロケーションを活用した準中食型のイートイン併設のおにぎり業態やみそ汁とごはんを軸とした一汁一菜型の定食店も出現してきています。外食業態の中でもコメに注目した動きは様々出てきており、今後の動きが注目されます。
コメの需要増は内食にとっては内食機会そのものを増やす要素として期待でき、中食・惣菜型にとってもコメの需要は値上げによる購入機会の抑制を防ぐ要素として期待されます。外食においては様々な価格が高騰し、値上げが回復傾向にある利用機会に水を差しかねない中で、価格高騰リスクの少ないコメを中心食材とすることで息の長い業態を形成することもできます。価格は消費を左右する大きな要素であることは言うまでもありませんが、今回の値上げラッシュの動きは新たなリテイルや商品を生み出すトリガーになるかもしれません。
※レシーカとは、CCCMKホールディングス株式会社がT会員に提供する家計簿アプリ。
レシーカユーザー(約5万人)のレシートデータを分析することができる。