産業動向レポート_2021年3月

  • 2021.06.06

本レポートは、CCCマーケティング株式会社がT会員にサービス提供している家計簿アプリ「レシーカ」ユーザー(約5万人)のレシートデータと、CCCマーケティング総合研究所による全国主要企業へのヒアリング調査に基づき、独自の視点で「食」業態を中心としたレポートをお届けします。

 

コロナ禍にできる企業ブランド力の向上

   東京都、大阪府、京都府、兵庫県の4都府県に対し、3回目となる緊急事態宣言が発出されました。4月25日~5月11日までの約2週間を期間としますが、その影響は多様な業態で出てくることは必至でしょう。昨年から続くコロナ禍による影響は小売・サービス業の業況を著しく後退させましたが、それらの業種を取り巻く取引業種にも大きな影響が出ている点も懸念されるところです。

 今回の緊急事態宣言によって、また一部の外食店はやむなく営業休止の選択を行っていますが、営業を再開したり、休止したりという繰り返しは以前のような安定的な調達を困難にし、業務用食品卸や業務用食品メーカーの業況悪化を引き起こしています。こうした状況の中で、一部の業務用食品卸ではホテルや外食向けのアイテムを食品スーパーに供給するなど、売り上げ確保に向けた転換の動きも出てきています。

 このような売り先の確保に成功しているケースは増加傾向にありますが、まだ数としては少なく、業務用食品卸の多くの企業では取引転換が進まず、大量の食品ロスが発生している状況です。また、外食チェーンの中で自社のCK(セントラルキッチン)を持つ企業も店舗の営業休止などにより、食材ロスが大幅に発生している状況が続いています。コロナ禍は、ここ数年、食品を扱う企業の大きな課題となっている食品ロスの発生においても悪影響を及ぼしていると言えます。

 国内では19年10月に食品ロス削減推進法が施行され、賞味期限の延長など、商習慣の見直しが進められましたが、この取り組みが本格化する前に、新型コロナウイルス感染症が急拡大し、流通の各段階で大量のフードロスが発生する状況に陥っています。このような状況を受けて、業務用食材を活用すべく生産者と生活者を結ぶ直販サイトが相次いで誕生したり、業務用食品をシェア利用する動きが出たり、フードロス解消を目的とする新たなビジネスの動きが急拡大し、注目されるところです。

 生活者の意識はこの数年の間に「フードロス」という言葉には敏感に反応するようになり、恵方巻やクリスマスケーキに代表される歳時メニューが引き起こす大量の廃棄に対しては、厳しい反応を示すようになってきています。

 消費の転換が進むタイミングにおいては“ブランド力”が消費に大きな影響を及ぼすと言われますが、新型コロナウイルス感染症が引き起こしている消費の転換は、企業にとって「フードロス」といった社会的な課題に対して取り組むよい機会です。客数を増やし、売り上げを伸ばすことが難しい現況においては、企業ブランド力を引き上げるような取り組みや事業の中で常態化している様々な“ロス”を解消するなど、従来、取り組めてこなかったことに目を向けることも業況改善につながる可能性があるのではないでしょうか。


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