新たな生活者意識を探るPART6

新たな生活者意識を探るPART5」から、商品が持つジェンダーイメージに注目してきました。そして、生活者がジェンダーのイメージを超えた消費行動を行うこと(売り場や商品自体が、男性向け、女性向けと特定のジェンダー向けに販売されている状況において、生活者が自身の身体的性とは異なる商品を購入する事象)を「ビヨンドジェンダー消費 」と定義し、消費の実態を見てきました。今回も、引き続き「ビヨンドジェンダー消費」がどの様に生活者の中に浸透しているのか、そして、消費経験後の変化についても見ていきたいと思います。
今回も、CCCマーケティング総合研究所(以下、「CCCマーケティング総研」)が2022年6月に実施し、1,620人より回答を得た「商品に関する意識調査」を基にお送りします。

 ※本コラムは商品に対する性別の意識や利用状況、商品に対するご意見を頂戴し、調査結果を公表することで、今の生活者の思いを理解いただくことを目的としています。

「ビヨンドジェンダー消費」の経験者は増加傾向か
まずは、「ビヨンドジェンダー消費」を初めて経験した人達の推移を、理美容品の6カテゴリー毎(化粧水・乳液、メイクアップ商品、日焼け止め、整髪料・ヘアクリーム・ヘアワックス、ボディシート・制汗剤、香水・フレグランス)に見てみましょう。
【図1】を確認すると、2018年から2021年にかけて、整髪料・ヘアクリーム・ヘアワックスの様に変動があるものも見受けられますが、傾向としてはビヨンドジェンダー消費を体験する人達が増えてきている傾向が見られます。2022年の数値は、調査実施月の関係で1~6月の回答を2倍にしているため参考値ですが傾向としては増加すること期待させる回答となっていると言えそうです。
ビヨンドジェンダー ジェンダーレス ボディシート 男性 女性   
 続いて、男女別に「ビヨンドジェンダー消費」経験の推移を見てみましょう。
【図2】男性のビヨンドジェンダー消費で注目するポイントとして、まずはFACE(顔)に利用する商品から見てみます。
 2018年以降、2021年までの間、メイクアップ商品の初購入者が10ポイントを安定的に超えてきています。また、化粧品・乳液は、毎年6ポイント以上が継続的に購入を体験しており、これらの実態を背景にメーカー企業や百貨店が男性化粧品・男性化粧品売り場への注力につながっている、とも言えそうです。そして、だけでなく、日焼け止めや、香りをコントロールするボディシート、香水、整髪料・ヘアクリーム・ヘアワックスなども女性モノを購入している男性が一定数存在している事がわかります。
 男性が、女性の理美容品を利用する理由は、様々ありますがインタビューの中で最も多くあった回答が「皮膚が弱いので、男性向けの商品では肌に合わないので女性向けを利用している」という回答でした。このことからも「ビヨンドジェンダー消費」の裏にあるインサイトをきちんと捉えることで、更なる男性理美容市場を開拓する事ができそうです。

ビヨンドジェンダー ジェンダー 生活者意識 男女 性別

 【図3】は、女性の「ビヨンドジェンダー消費」経験推移になります。
2020年に、化粧水・乳液、メイクアップ商品、整髪料・ヘアクリーム・ヘアワックス、日焼け止めなどの経験値が下がっています。これは、コロナ禍の外出自粛などの影響で消費自体が低下したこと、そして、商品を店頭で試すことができなかった事などが背景にあるのではないかと考えられます。
グラフを時系列でみると、2020年の低下はあるものの、2021年における女性の「ビヨンドジェンダー消費」はかなりの伸長を見せています。これは、女性たちの中で「ビヨンドジェンダー消費」のハードルが何らかの要因で下がってきている事が背景にあるかもしれません。

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理美容品ビヨンドジェンダー消費を継続するのは男性
 では続いて「ビヨンドジェンダー消費」を経験した後に、どのくらいの生活者がビヨンドジェンダー消費を“継続”しているのか?を見てみましょう。今回は、理美容品の中から全体の継続が6割を超える3つのカテゴリーを確認してみます。
 興味深い事に、全体の継続率が6割を超えていても、男女で継続率が異なる傾向が見受けられます。ボディシート・制汗剤は、男性継続率が71.1ポイント、女性継続率が67ポイントとなっており、男女共に6割を超える継続率になっています。
続いて、日焼け止めを見てみます。男性継続率は72.8ポイント、女性継続率は36.4ポイントとなっており、全体の継続率60.3ポイントを牽引しているのは男性であることがわかります。CCCマーケティング総研が実施している生活者インタビューの中で男性の日焼け止め利用は、若年層ほど早い時期から慣れ親しんでいる事がわかっています。「小学生のころから野球をするときも、母親から日焼け止めだけはするようにと言われていた」「大学時代から肌をケアするために、ファンデーションまではしないけど、日焼け止めは塗っています」といった意見が20代男性から聞かれました。親が購入してくれていた商品を、自分で購入することでビヨンドジェンダー消費を無意識に経験している層や、自分に合う商品を探す過程でビヨンドジェンダー消費に行きつく層も発生しています。ドラッグストアなどの売り場でみる日焼け止めは、圧倒的に女性向けの商品数が多い様に見受けますが、男性のニーズを把握することで、クレンジング(日焼け止めを落とす)や化粧水(肌ケア)などへの展開もしやすくなりそうです。

 なお、ダウンロード資料 には、継続率6割以下の理美容品についても掲載があります。本ページよりダウンロードをしてご参照ください。
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男性の購買意欲を加速させる「ビヨンドジェンダー消費」
 【図5】は、「ビヨンドジェンダー消費」経験後に、購入商品と同じカテゴリーでの消費増減を、「とても増えたと思う」「増えたと思う」と「とても減ったと思う」「減ったと思う」で表示しています。(メイクアップ商品は、集計対象N=100以下の為、参考数字です。)
 上段の女性の棒グラフと、下段にある男性の棒グラフを比較すると、男性の「とても増えたと思う」「増えたと思う」が女性の回答を上回っていることがわかります。また、「とても減ったと思う」「減ったと思う」の男性の回答も、女性と比較すると少なくなっていることから、男性の購買意欲が高く維持されている傾向がわかるのではないでしょうか。
 男性の購買意欲が高く維持される要因としては、商品選択の幅にあると想定されます。例えば、ドラッグストアに出向くと、化粧水・乳液の多くは女性を意識したキャッチコピーやビジュアルの商品で占められています。男性が、女性を意識した商品を購入すること=ビヨンドジェンダー消費を経験することで、今までの男性向け商品から選ぶという固定概念が取り払われ、よいものから選ぶ、つまりそれは、女性向け商品も含めた商品が対象となり大きく商品選択の幅が拡大します。このような状況から、より男性が、ビヨンドジェンダー消費に意欲的になるのではないかと我々は想像しています。
 逆に、女性は一度「ビヨンドジェンダー消費」を経験しても、女性向けの商品が圧倒的に多く選択肢もあることから、元に戻ることも多くなるのではないでしょうか。
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 今回は、ビヨンドジェンダー消費がどの様に生活者の中に浸透しているのか、そして、消費経験後の変化について理美容品を中心に見てきました。ビヨンドジェンダー消費は、年々経験者が男女ともに増加しており、なかでも男性経験者は、毎年経験者を安定的に積み上げ堅調に増加しています。そして、女性の経験者は2018年と2021年を比較してみると拡大傾向にあると言えそうです。「ビヨンドジェンダー消費」経験の後は、男性がより継続購入の経験を重ね、高い購入意欲を持って消費を継続しているといえるのではないでしょうか。
 次回は、「ビヨンドジェンダー消費」を促進させる要因について見ていきたいと思います。

 
 

(参考)本調査で回答を得ている指定商品は以下の通り
アパレル(外出着)/アパレル(家中着)/アクセサリー・ジュエリー/靴/バッグ・リュック/お財布・小物入れ・ハンカチ/化粧水・乳液/メイクアップ商品/日焼け止め/整髪料・ヘアクリーム・ヘアワックス/ボディシート・制汗剤/香水・フレグランス/ネイルケア用品/除毛用品・除毛剤/美容機器(美顔器・美顔スチーマー・ヘッドマッサージ器など)

【調査概要】
調査地域:全国
調査対象者:男女16~69歳のT会員
有効回答数:1,630サンプル(事前調査3,936サンプル)
調査期間:2022年6月28日(火)~2022年7月1日(金)
実査機関:CCCMKホールディングス株式会社(調査時は旧社名:CCCマーケティング株式会社)
調査方法:インターネット調査(Tリサーチ)
 
本調査の集計表を販売しております。
詳しくは、下記をご確認の上、お問い合わせください。
 
【調査内容】
質問数:全18問
<質問項目>
・自身で利用するための、異性向けの商品やサービスの購入実績・回数・購入時期
・最近1年間の異性向けの商品やサービスの購入点数
・異性向けの商品やサービスの購入後の購入意欲・購入点数の変化
・異性向けの商品やサービスの購入のきっかけ
・初めて異性向け商品を購入した場所・方法
・異性向けの商品やサービスの購入2回目以降の購入場所・方法
・異性向け商品購入後の行動、購入前の経験
・商品購入時のこだわり 等

<属性項目>
性別・年代・居住都道府県


【集計内容】
・性年代別クロス集計

【注意事項】
・集計は日本の性年代人口構成比に合わせて調整しています。
・集計対象数が極端に少なくなる質問は出力していません。

【商品名/番号】
品名:商品に関する意識調査(2022年6月)
番号:22-014-002
【価格】
集計一式:36,000円(税別)
             
                                                                          


【お問合せ先】
CCCマーケティング総合研究所 
担当:杉浦・斎藤
[email protected]

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