新たな生活者意識を探る~SDGs~(無料レポートあり)
2021年は、多くの人がSDGs(Sustainable Development Goals、エスディージーズ)という言葉を耳にする機会が増えた1年だったのではないでしょうか。
SDGsは、2015年の国連サミットで採択されました。2030年までに持続可能でよりよい世界を目指して「持続可能な開発目標の17ゴール」を設定し、更に具体的な169のターゲットがあります。
国、企業・団体、個人が「誰一人取り残さない」社会の実現に向け、国境や法人・団体・個人といった垣根を超えて目標に取り組んでいくことが、SDGs活動となります。昨今、耳にすることが多くなったこのSDGs。生活者のみなさんは、どのように理解し、行動しているでしょうか。
CCCマーケティング総合研究所(以下「CCCマーケティング総研」)では、2021年10月7日(木)~13日(水)にかけて、2222人のT会員のみなさまを対象に「社会や自然環境に関するアンケート調査」を実施しました。我々が2030年のゴールに向けて行動するためにも、まずは現時点で生活者の認識を確認していきたいと思います。
学生のSDGs理解が、経営者を上回る
まずは、SDGsという言葉の認知と理解について確認していきます。
SDGsという言葉の認識は、全体の80%を超えてきています。
また、SDGsを知っていて、十分に理解+ある程度理解がある層は、全体の半数になっており企業活動やメディアから発信される情報により生活者の認知と内容理解が進んでいる事が伺えます。
性・年代別では、男性が女性よりも高く、年代が若いほど認知と理解が浸透しているようです。
もう少し詳しく、職業別で確認したいと思います。
社会人である経営者・会社役員や、会社員・公務員よりも大学生、高校生のSDGsへの認知と理解が高い事が分かります。
これは、大学や高校の教育現場で、SDGsを課題として取り入れている為に、「学び」の一環でSDGsへの認知と理解、そして学生によっては課外活動や自主活動等による行動までもが伴っていると言えるでしょう。学生や今後入社してくる新入社員と、彼らより上の世代の間に、SDGs理解の差が発生する可能性を示唆しているようです。
【図1】
【図2】
SDGs活動を無意識のうちにしている生活者
次に、SDGsという言葉から、「持続可能な開発目標の17ゴール」へ視点を移していきたいと思います。
「持続可能な開発目標の17ゴール」から「知っている」「行動している」項目について回答を得ています。ここでは、「無意識なSDGs行動」をあぶりだしています。
まず、「持続可能な開発目標の17ゴール」の項目だけを見て回答してもらい、その後「持続可能な開発目標の17ゴール」の具体的事例※を提示し、ご自身が普段の生活の中で行動している項目を再度回答してもらいました。
※具体的事例掲載:貧困をなくそう 具体例①:貧しい人を支える寄付活動を行う 具体例②:地域内での食材消費を増やす
回答を見て気づく事があります。それは、生活者の多くが、「無意識なSDGs行動」をしているという事です。行動している項目(具体例を確認し行動していると回答した項目)とSDGs17項目との関連性を認識出来ていないことが多く見受けられます。
「つくる責任、使う責任」でみてみましょう。21.4%が「行動している」と回答していますが、「具体例を確認し、行動していると回答」しているのは49.4%になります。
つまり、差分の28ポイントのギャップが「無意識なSDGs行動」に当たります。
今回確認している17項目すべての項目で「無意識なSDGs行動」が行われている事がわかりました。生活者の多くが、自身の行動とSDGsの活動との関連性を認識・意識できていないと言えそうです。
【図3】
“個人の目線”と“人類の目線”
生活者が重要だと思う項目を、回答してもらいました。
複数回答の上位には、“貧困をなくそう”“すべての人に健康と福祉を”といった個人の生活に影響することが分かりやすい項目が上位に登場します。
次に、昨今メディアでも取り上げられることが増えている“海の豊かさを守ろう”海に関する項目が続きます。海に関する項目も、漁獲量の減少で海産物価格の高騰、魚が海洋中のマイクロプラスティックを食べる事による生態系への影響を考えると、個人としての危機感もありそうです。
単一回答では、複数回答とは異なる顔ぶれが上位に並び、もっとも重要な項目は“気候変動に具体的な対策を”続いて“すべての人に健康と福祉を”、“平和と公正をすべての人に”と続きます。
単一回答項目上位は、より多くの人や未来への影響を想定している様に見受けられます。
国・企業・団体など個人を束ねた総合的な民意で機能的に取組むことより、ゴールへの最短ルートを期待していると言えるのではないでしょうか。
【図4】
無意識な行動は、道徳感とルールが下支えしている
前述で、「無意識なSDGs行動」が生活者の中にあることがわかりました。
そこで、具体的な行動項目81例を提示し、全体・性年代別に上位10位を見ていきたいと思います。※「具体的な行動項目81例の全体・性年代別上位10位資料」は無料ダウンロードいただけます
全体・各年代ともに、“食べ残しを減らす”が1位にきており、食材・食品への強い関心が見えます。昨今、「大量仕入の誤発注をtweetし、購入者が殺到して売り切れた」といったニュースなども目にしますが、これらの根底には食材・食品を無駄にすることへの抵抗感もあるようです。
企業の目線で考えると、廃棄や売上棄損を防ぎたい為に賞味期限が短い商品を定価から安価な価格に切り替えて販売していましたが、表現を「フードロス削減に協力して欲しい」というメッセージに変更することで、SDGs活動への参加を促すことも有効かもしれません。
他の項目では、訳アリ品の購入や、節電、節水、室温調整、食材の冷凍保存、などエネルギーや資源を有効に使おうとする姿勢が生活者の回答から見えます。
特に、60代以上の男女においては、節電、節水が上位に登場しており生活インフラとして電気や水道が普及する過程を経験している世代ならではの意識がある様です。
上位項目を見てみると、既に生活の中でSDGsを実践している事がよくわかります。特に、無駄にしない、有効に使う、ごみは持ち帰るなどといったことは、小学校の道徳などでも学んだ記憶がある人が多いのではないでしょうか。また、リサイクルやマイバック・マイボトル、室温設定などは、自治体、企業・団体などが各々ルールをつくり、多くの生活者はそのルールを順守しながら生活していることでしょう。
このような状況から考えると、我々が取組むことは『2030年に向けてSDGsの本質的な内容を現在の生活と照らし合わせ、理解しなおすこと』により、更にスピーディに且つ効果的な進捗が望めるかもしれません。
最後に、具体的な行動項目81例の中から、生活者が行動できていないと回答している項目を確認します。
「●●認証」の項目が、下位ランクに出現してきています。これらの認証は、生活者への認知や理解が限定的である可能性があり今後企業や団体が乗り越えるべき課題のひとつになりそうです。
また、生活者がSDGsに関する取り組みや投稿をSNSで発信シェアする事も消極的であることが分かります。企業のSNS戦略とSDGsを組み合せて考えるときは、生活者にシェアされる発信される内容に工夫する必要があると言えるでしょう。
【図5】実施率が低い順
1 | 認証パーム油「RSPO認証」使用品を購入する※1 |
2 | カーボンオフセット旅行を利用する |
3 | SNSで「SDGsに関する」取り組みを発信する |
4 | SNSで「SDGsに関する」の投稿をシェアする |
5 | RA認証(レインフォレスト・アライアンス認証)の商品を利用する※2 |
6 | 養殖水産物のエコラベル「ASC認証」品を購入する※3 |
7 | 被災地を訪問する |
8 | フードバンク、フードドライブに参加する |
9 | MSC「海のエコラベル」付き製品を購入する※4 |
10 | 福祉イベントに参加する |
今回は、生活者のSDGs理解と実際の行動について詳しく見てきました。
SDGsの認知率が8割を超え、理解も5割以上の生活者が認識しているいま、より一歩踏み込んだ行動に自治体や企業が進んでいく段階にきているようです。
また、生活者自身も学生を見習いもう一度SDGsの本質を認識することで自治体・企業と共に、役割認識と協力意識の改革が進むのではないでしょうか。
次回は、生活者の情報収集の状況と、企業への期待についてお送りします。
※1 「RSPO認証」とは、「Roundtable on Sustainable Palm Oil」熱帯雨林の破壊や生産国の人権労働問題を考慮し、持続可能なパーム由来原料を使用した、あるいはその生産に貢献した製品であることを表わしています
※2RA認証とは、「レインフォレスト・アライアンス認証」。人と自然のより良い未来のため、持続可能な農業基準に準拠する認証農園産の原料を使用した製品であることを示す。
※3 「ASC認証」とは、「Aquaculture Stewardship Council」環境負荷を低減し、地域社会に配慮している養殖業に対する国際的認証制度でサケ、エビ、アワビなどで規格が作成されています。
※4MSC海のエコラベルとは、Marine Stewardship Council:海洋管理協議会が管理する水産資源と環境に配慮し適切に管理された、持続可能な漁業で獲られた天然の水産物の証。
【調査設計】
調査地域 :全国
調査対象者:16歳~60代のT会員男女
サンプル数:2,222サンプル
調査期間 :2021年10月7日(木)~13日(水)
実査機関 :CCCマーケティング株式会社(Tアンケートによる実施)
※性年代を日本の人口構成比に合わせて集計
本調査の集計表を販売しております。詳しくは、下記をご確認の上、お問い合わせください。
【調査内容】
質問数:全10問
内容:SDGs17項目について
Q.言葉の認知・理解
Q.知っている項目、行動している項目
Q.行動している項目(具体例を確認の上、回答)
Q.普段からおこなっている行動(81項目)
Q.重要だと思う項目
Q.情報収集している項目、意図せず情報収集できる項目
Q.企業が積極的に取り組むべきだと思う項目
Q.企業のSDGs行動について感じること(「企業に好感が持てる」など8項目)
【集計内容】
・単純集計
・性年代別クロス集計
【注意事項】
・クロス集計において、集計対象数が極端に少なくなる質問は出力していません。
【商品名/番号】
品名:「社会や自然環境に関するアンケート調査(SDGsに関する調査)」(2021年10月)
番号:21-014-002
【価格】
集計一式:12,000円(税別)
【お問合せ先】
CCCマーケティング総合研究所
担当:杉浦・斎藤
[email protected]