移住・ワーケーション・多拠点居住を受け入れる定住者の思い(無料レポートあり)
私たち、CCCマーケティング総合研究所(以下「CCCマーケティング総研」)は、『暮らす人と共に歩み、共に考えるシンクタンク』として生活者の意識を起点とした戦略設計に重点を置いています。更に、全国の視点で捉えるだけでなく、地域ごとの産業や未来にも目を向けていきたいと考えています。
人口の減少が進んでいる日本では、内閣府の将来推計人口によると2035年に人口は11,212万人となり、3人にひとりが65歳以上の高齢者になると見込まれています。このような背景からも地域経済は、人口減少・高齢化により担い手不足という課題に直面してきています。
ここ最近では、地域経済を維持し活性化するために、その地域との関わりやつながりを持ち、その地域を応援したい人と地域をつなぐことで地域振興を促進させようとする動きが増えてきています。
今回、我々CCCマーケティング総合研究所は、「定住者の受け入れに関する意識調査」を2021年9月22日(月)~29日(月)にかけて、8540人のT会員の皆様を対象に実施しました。社会課題である地域経済の活性化のために、「関係人口」や「交流人口」ひいては「定住人口」を増やす施策が多く講じられ始めています。今回は、受け入れる側の地域に住んでいる「定住者」の想いに目を向けていきます。
出典元(総務省関係人口ポータルサイト) https://www.soumu.go.jp/kankeijinkou/about/index.html)
今回、定住者の想いを紐解く際に具体的な3つの状況を提示した上で、調査に回答してもらいました。
・「移住」 自身の居住地を離れて、他地域に移り住むこと
・「ワーケーション」 働きながら休暇を取り、自身の居住地を離れて、旅先で仕事をすること
・「多拠点居住」 自身の主たる居住地以外に、複数の生活拠点を持つこと
※定住地=現在、自身が生活の基盤を置く場所
6割以上が自分の住んでいる地域に人がやってくることに前向き
まずは、定住者自身が生活基盤を置く都道府県や地域に「移住」「ワーケーション」「多拠点居住」それぞれの目的で人々がやってくることに対し、「どの様に感じているのか」を見ていきます。
定住者は、自身が住んでいる地域に人がやってくることに対し、6割以上が前向きに捉えています。
中でも「移住」に対する前向きな思いは「ワーケーション」「多拠点居住」よりもが約5ポイント以上高く、ネガティブな回答も少なくなっています。このことからも、自身の住んでいる地域に「移住」してくる人を受け入れる思いは、全体傾向として前向きであると言ってよさそうです。
【図1】
移住者の受け入れに寛容な「若者」と「女性」
次に、自身の住む地域に「移住」する人がやってくることへの思いを性年代別に見ていきます。
男女ともに、20代が「移住」受け入れに最も前向きであり、若年層ほど前向きな回答が高い傾向です。また、男女別で見ると、女性が全世代で男性よりも「移住」受け入れに対して前向きな回答を示している事がわかります。人口が減少していく中で、若者が自身の未来と地域の未来をどの様に創造すべきかを考えているとすれば、移住者受け入れに寛容になる事は当然のことと言えそうです。
【図2】
続いて、エリア別の視点でも見ていきましょう。
ここでは、「移住」する人が自分の住む地域にやってくることに対して「とても良い」「まあ良い」の合計値が高かった10都道府県を表示しています。エリアの傾向としては、九州(鹿児島県・福岡県・大分県)、中国地方(岡山県・山口県)四国地方(愛媛県・高知県)を含む西日本エリアが、「移住」してくる人に対し前向きに捉えています。
【図3】
定住者は、地域経済の活性化・発展に期待
次に「移住」「ワーケーション」「多拠点居住」者が、自分たちの住む地域にやってくることで期待することを見ていきます。
約半数の47.5%が「地域がにぎわう、活気づく」ことに期待をしており、現在の居住地の経済に多くの生活者が課題意識を持っていると言えそうです。
また、項目の上位を見ていくと「地域経済の活性化・発展」「地域コミュニケーションの増加」「地域労働力の増加」に関する項目が多くの支持を集めており、移住する人が増える事で、人との交流が増え“まち”としてのコミュニティが広がり、労働力としても、消費においても地域経済に貢献してもらいたい。そんな定住者からの期待が見えます。
【図4】
最後に、「移住」「ワーケーション」「多拠点居住」する人が、自分たちの住む地域にやってくることによる懸念点を見ていきます。
ここでは男女の差はあまりなく、年代別によって心配事に違いがあることがわかりました。
また、心配は若年層が全般的に高い数値となっている事は、特に注目したいポイントです。
【図5】は、左から全体の回答率が高い項目から順に並んでいます。“特にない”の項目を見ると、年齢が高くなるにつれ回答者が多くなっており、高齢層は心配が少ない事がわかります。
次に、地域の生活環境に関すること(“地域ごみが増え自然が破壊されそう”“地域が騒がしくなる”“交通機関や施設が混雑し生活環境が不便になる”)を見てみると、主に40代以下の層が平均より高く心配を示しています。地域の未来を担う世代や、子育て世代にとっては、新たな人が地域に流入し増える事で生活環境の変化を懸念していると言えそうです。
また、外出・通勤時の交通機関などへの影響や地域の雇用減少への心配については、働いている世代の中でも特に20代と30代がより強く反映されています。
【図5】
高齢層に視点を当ててみましょう。高齢層は、コミュニケーション(“どんな人かわからない人には地域に入ってほしくない”“地域のコミュニケーションに関心がなさそう”)に対しての心配がより大きくなっています。
地域コミュニティでは、入る側(「移住」「ワーケーション)「多拠点居住」)・受け入れる側共に円滑なコミュニケーションを心がける必要がありそうです。
今回は、「移住」「ワーケーション」「多拠点居住」の人が、自分たちの住む地域にやってくることに対しての期待や心配を見てきました。
若年層は、「移住」する人の受け入れに前向きにも関わらず、心配事は高齢層より多いことも見えてきました。
地域経済を維持し活性化するためには、新たに居住する人たちと、元からその地域に住んでいる「定住者」の双方の心配を無くし、コミュニケーションの円滑化によって、住みやすいまちづくりが実現できることを期待したいと思います。
【まとめ】~自分たちの住む地域に「移住」「ワーケーション」「多拠点居住」者がやってくることに対して~
・約6割以上が自分の住んでいる都道府県・地域に人がやってくることに前向き
・移住受け入れに寛容なのは、若者と女性
・定住者は、人がやってくることで地域経済の活性化を期待
・若年層の心配事は、地域の生活環境の変化と、地域雇用への影響
・高齢層の心配事は、人とのコミュニケーション
本調査の【図5】「移住・ワーケーション・多拠点居住で外部から人がやってくることの懸念点」全データを下記より無料ダウンロード頂けます
【調査設計】
調査名:都道府県に関する調査より 定住者の受け入れに関する意識調査
調査地域 :全国
調査対象者:男女20~69歳のT会員
サンプル数:8540サンプル
調査期間 :2021年9月22日(水)~9月29日(火)
実査機関 :CCCマーケティング株式会社(Tアンケートによる実施)
※人口構成比に補正した集計を採用
【お問合せ先】
CCCマーケティング総合研究所
担当:杉浦・斎藤
[email protected]